投資実行時に起こり得るトラブルと対策

 株式会社Beedの真下です。今回は、エクイティファイナンスを実施する場面において、投資家との投資関連契約の締結から着金までの間に起こり得るトラブルとその対策についてまとめました。
 投資を受ける多くのスタートアップに届き、トラブルの防止に繋がれば嬉しいです。

1.はじめに

 はじめに、投資を受けるときは、事前にスタートアップのエクイティファイナンスに詳しい弁護士又は司法書士を探して、相談しながら進行していただくことをお薦めします。
 事前にご相談いただければ防げることが多々ありますが、事後のご相談の場合、手間もコストも必要以上にかかることがあり、さらには、取り返しのつかない失敗となってしまうことがあります。

 代表取締役の住所変更など、簡単な手続きであれば自社で行っても支障ありませんが、特に、株式や資本金に関する取引(株式発行、株式譲渡、減資、ストックオプション)については、ミスの代償が大きいため、事前に専門家に依頼するようお願いできれば幸いです。

 もし、株式や資本に関する取引について事前にご相談できる方が周囲にいない場合は、以下までご連絡いただければ幸いです。適切な専門家のご紹介など、何かしらお役に立てるかもしれません。

2.着金に関するトラブル

 投資家の払込みは、特定の期間内に、満額着金する必要があります。事前に必要な準備をし、正確な情報を投資家に伝え、リマインドを行い、期日までに確実に振り込みがなされるように進行しましょう。投資実行までに起きがちなトラブルの例として、以下のものがあります。

  • 契約書の投資家情報に誤りがあった(契約締結の遅延)
  • 個人出資の想定で進めていたら資産管理会社からの出資だった(同上)
  • 契約書の株主の住所氏名が古い情報だった(同上)
  • 契約書の確認前に振り込まれてしまった
  • 払込可能な期間の後に振込みされてしまった
  • 投資金額は100万28円なのに、100万円ちょうど振り込まれてしまった
  • 銀行手数料が受取人(発行会社)負担で振り込まれてしまった
  • 投資金額が、1日の振込上限額を超過することが払込期日当日に発覚した
  • 投資家が振込を失念し、払込期日までに振り込みされなかった
  • 投資家側の送金額の誤入力により、異なる金額が振り込まれた
  • 起業家が送金額を誤って伝えてしまった
  • 起業家が送金先の法人口座番号を誤って伝えてしまった
  • 契約書の押印(or電子サイン)作業が遅延した
  • 投資家に提出した履歴事項証明書、印鑑証明書、投資関連契約書の情報と会社の最新情報(商号、本店、代表者住所等)に相違があった
  • 海外送金を受領できない銀行を払込口座にしていた
  • 海外送金受領に必要な金融機関の手続きが未了だった 
  • 海外投資家側で必要な外為法の届出が間に合わなかった

※最後の3つは、海外送金があるケースのみ

3.対策

 事前に以下の準備や確認を丁寧に行うことで、上記2のようなトラブルが発生しにくくなります。「ここまで細かく確認しなくて大丈夫だろう」「逆に投資家や株主に失礼なのではないか」と感じる内容もあるかもしれませんが、どの企業も人為的ミスを100%防ぐことは難しく、相手方に配慮し、丁寧にお伝えいただければ不快の念を抱く方は少ないと思います。

(1)銀行との事前調整

■投資額が数億円又は海外送金があるとき
・払込口座となる銀行支店に事前に連絡し、必要な準備がないか確認する
・海外送金の場合は、銀行手数料や海外送金受領の手順等を確認する

(2)各契約書締結の事前準備

■各契約締結当事者全員に確認する事項
・契約書に記載された氏名住所に誤りがないか
・押印(or電子サイン)するために必要な書類があるか ex.株主総会議事録
・押印に必要な日数
・海外出張等で押印できない期間がないか
・電子サインの場合は送信先メールアドレス

■契約当事者のうち、投資をする投資家に確認する事項
・個人投資家の場合は、個人出資(又は資産管理会社等の出資)で良いか
・個人投資家の場合は、海外出張等で振込できない期間がないか
・払込みに必要な書類のリスト
・必要書類の提出完了から払込実行までに必要な日数
・外為法の届出を要する場合は、必要な日数(余裕をもった確実な日数)

※各契約書=株式引受契約書(投資契約書)、株主間契約書、買収分配合意書、総数引受契約書等

(3)必要書類の準備

■専門家(依頼している弁護士、司法書士)に確認する事項
・必要書類のうち、何を依頼できるか
・依頼する書類(ex.取締役会議事録、株主総会議事録)の納品日
■社外役員がいるとき
・役員の押印に必要な日数
・電子サインの場合は送信先役員のメールアドレス

(4)投資家への連絡

※以下は一例です。
■連絡する内容
振込可能期間:20xx年xx月xx日~20xx年xx月xx日
投資金額:●円
払込口座:
 銀行名等 :●●銀行●●支店
 口座番号 :普通 ●●●●●●●
 口座名義人:株式会社●●●● 又は カ)●●●●
お振込みに関するお願い:
 ・金融機関の振込手数料は投資家様のご負担でお願い申し上げます。
 ・払込の期限は20xx年xx月xx日となります。
 ※以下は前日入金可能なスケジューリングの場合
 ・可能であれば、期限の前日(20xx年xx月xx日)までにご入金いただけますと幸いです。

※記載内容は一例です。適宜修正してお使いください。

(5)リマインド

■振込期限の前営業日に行うこと
着金確認(1円単位で確実に確認)し、振込未了の投資家のリストアップ
・振込未了の投資家に、振込期限のリマインド

(6)着金確認

■振込期限の当日午前中に行うこと
着金確認(1円単位で確実に確認)し、昼時点で振込未了の方に至急連絡

4.着金後

 全ての着金が確認できたら、株主名簿(又は新株予約権原簿)を更新し、投資家に事後提出書類を送付して、速やかに登記変更を行ってください。登記には期限がありますので、注意が必要です。

5.おわりに

 スタートアップの起業家や管理部門の方々にこの記事をお読みいただき、投資時のトラブルの減少に繋がれば幸いです。
 もし可能であれば、多くのスタートアップに届くようシェアいただけると大変嬉しいです。

6.Beedについて

 株式会社Beed(https://beed.jp/)では、スタートアップの株主総会運営サポートや、株式実務に関する情報提供を行っております。
 エクイティファイナンス等の実務について、以下のようなテーマの動画を配信しておりますので、宜しければご覧ください。

■動画一覧
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1hUOKRsD7j616cwfjQQXF5botdz8cilYK2nve2FK22kU/edit?usp=sharing

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後も、お役に立つ情報をお送りできるよう取り組んでいきます。